#5『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセッット1』(河野祐/角川文庫)

実写映画が公開され、アニメもスタート、漫画版もスタートした(らしい)河野祐先生の『サクラダリセット』の第1巻。

『階段島シリーズ』で先生の文章のファンになった僕は早くこの作品を読みたかった。でも、店員に映画化するからとか思われたくないという謎の葛藤に苛まれながらようやく手にした。

 

様々な能力者を抱える咲良田という街を巡る、世界を3日間巻き戻すことのできる能力・リセットを持つ少女春埼美空と見聞きしたことを絶対に忘れない能力を持つ少年淺井ケイの物語である。

 

ここまでだとよくあるSFかと思うかもしれない。確かに能力を使って世界を変えていくSF的な面白さも存在している。しかし、美空やケイ、そして彼らを取り巻く人物たちの心理描写がとても丁寧に描かれているのがこの作品の大きな魅力の一つであろう。

 

「僕は神さまになりたい。いちいち人に試練を与えたりしない、人間不信じゃない神さまに。お腹がすいている人にはパンをあげて、悲しんでいる人は幸せにする。毎日そんな仕事をして暮らしたい」

きっとそれは人の為なんかじゃない、もっとエゴイスティックな理由で。世界中から悲しみがなくなればいい。

 

p.110

場面的には、ただ取り留めもない話をする、というものだが、誰か他人の幸せを願うことは、その人のためではなく、願っている人のただの身勝手であると気づかされる。

ケイは過去のとある出来事を基にこのような考えをする。正しい・正しくないはそれぞれの考えだが、僕は重要な考えだと思う。

 

1巻目から相当楽しめた。このワクワクがあと6巻続くと思うととても楽しみである。

 

野村周平目当てに映画をみたみなさん、ぜひ原作小説を読んでください。この作品を野村周平かっこよかったで終えるのはもったいなさすぎる。読めばきっとあなたも河野祐先生の美しい文章の虜になるはず!